2012年01月21日

「最長60年」は何時か来た道

原発関連について書くのを暫く自粛していました。

ですが、やはり自重しながらも書くことにしました。
原発は、エネルギー問題であり環境問題。
農業は、そのどちらとも密接に関わる産業ですから。

ご存知のように、17日、政府(内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室)は
「廃炉40年の例外延長を、最長20年とする」
との方針を明らかにしました。

6日に細野環境相が発表した「原則40年」も、今回の「最長20年」も
その科学的技術的根拠が示されていません。
「最長20年」について同準備室は
「米国の考えを踏襲したもので、世界的に認められている」と述べるだけ。

新聞や、これまで読んだ本に書かれている「事実」から「見える」ことを
幾つか書きます。


1、官僚主導、しかも省庁間の力関係で方針決まっている

「最長60年」というのは、
経済産業省が従来から主張する「60年運転でも十分な余裕がある」
そのままの内容です。

他方この方針を発表した同準備室は、内閣官房内の組織で、
原子力安全庁を今年4月に設置することを目指し、法案立案などの準備をする趣旨で
昨夏設置されたものです。

ちなみに、内閣官房とは、内閣を補助し、総理大臣を直接補佐する機関です。
官房長官、官房副長官(3人)と総理大臣補佐官(5人以内)は政治家、
官房副長官補(3人)は国家公務員が就任します。

実際には財務省、外務省、警察庁もしくは防衛省を出身官庁とする副長官補3人の
影響が大きくいと言われています。

最も関係の深い省庁の大臣として開室式で看板掛けをして訓示まで述べ、
ほんの6日前には「原則40年」を発表した細野環境相が
海外訪問中のタイミングに、
経産省の主張そのままの方針が、同準備室から発表されている。

どうみても、おかしくありませんか?

内閣主導のように見せかけて、
省庁間の力関係では圧倒的に強い原発推進経産省の意向で物事が決まって、
弾かれた環境省(環境相)が居ない間に内閣官房が発表、
という構図が見えて来ます。


2、専門家無視
3、アメリカ主導

「廃炉40年」にも「例外延長は最長20年」にも、
専門家からはもちろん多くの疑問批判が出ています。
専門家からの多様な意見を参考に吟味した形跡は見当たりません。

エネルギー政策(原子力開発)において、
「専門家の意見を聞かない」「専門家を蔑ろにする」
ということが、
1952年にサンフランシスコ講和条約で原子力開発禁止条項を解除されて以降、
日本が原子力政策に大きく舵を切っていく過程でも2度ありました。

最初は中曽根康弘氏。
アメリカでキッシンジャー氏(当時ハーボード大城教授、後に大統領補佐官)主催
のセミナー出席後、帰国して
原子力開発政策を押し進め、高額予算をゴリ押しで通してしまいます。

これに対して、専門家は ー
上記講和条約直後には物理学者の立場から
「日本も原子力について国を挙げて研究を進めるべき」
と主張していた茅東大教授ですら、
「日本にはまだ自力で研究を推進できる学者はいない、まず基礎研究から始めるべき」
と反対。

これに対して中曽根氏は、
「あなたたち学者が昼寝しているから、札束でほっぺたをひっぱたいてやっているんだ」
と言ったそうで。

中曽根氏は、それを言ったのは他の代議士だと自伝で書いていますが、少なくとも、
「専門家を無視して、事務屋が突っ走っている」
のが判ります。

ところがこの年「第五福竜丸」事件が起こります。
アメリカによるビキニ環礁での水爆実験で漁船乗組員が「死の灰」を浴びてしまいます。
当然、反米、核兵器反対運動が盛り上がります。

ここで登場するのが、正力松太郎氏。
ご存知、読売新聞社長にして日本テレビ社長、
そして衆議院議員(貴族院議員で戦後A級戦犯指定後不起訴)。
原子力委員会初代委員長。

子分格の中曽根は、
経団連会長石川氏、前述茅東大教授、を実質「騙して」同委員会入りの了解を得た上で、
本丸、ノーベル物理学賞受賞・湯川秀樹氏の委員会入りを実現。
純粋な学者の良心を手玉にとって騙すいきさつは、佐野真一著「巨怪伝」に
詳しく書かれています(気分悪くなりますが)。

しかし、正力が
委員会初会合で「原子力の自主開発などやってる暇はない、輸入した方が手っ取り早い」
という趣旨の発言をし、かつ
「5年以内の原子力発電所建設」を打ち出したことで、

湯川氏は正力松太郎に不信感を抱き1年後に辞任。

正力氏は他方、アメリカから原子力推進の学者を招き、
読売、日テレ網を活用して全国規模で原子力安全展示会を敢行、
世論を変えてしまいます。

何故これほどまでに、正力松太郎は原発建設を急いだのか?
彼は、CIA(アメリカ中央情報局)のエージェント(工作員)だったことが判明しています。
コードネームは、"podam"、"pojacpot-1"。
有馬哲夫氏(早大教授)が、アメリカ国立第二公文書館によって公開された外交機密文書を基に
明らかにしております。ご存知の方も少なくないでしょう。

長くなりましたが、こうして「事実」を見ると、
中曽根康弘、正力松太郎共に、
「アメリカの息がかかっている」、「専門家の意見に耳を傾けずに突き進んでいる」
ことが明らかです。

今回、20年の根拠について準備室の説明は、あろうことか、
「アメリカの考えを踏襲した」
とアメリカ従属かつ思考停止状態。
政府や官僚は、日本国民や専門家とアメリカ、どっち向いて仕事してるのでしょう。


農業という、机上ではなく「現場」で「自然」と向き合って仕事していると、

人間が頭だけで考えたこと、効率、思い(良く働けば「夢」、悪く働けば「欲」)、
言い方を換えれば政治や経済といったものは「虚」であり、
「現場」「自然」といった「実」をないがしろにして「虚」に走るとろくな事が無い、

と感じます。

「政治主導」が「官僚主導」に変わっただけで、
福島原発事故という、これまでの価値観を変えるほどの事故を体験したのに、
専門家による地に足のついた慎重論に耳を傾けずに、
これまで通り、効率、欲、しがらみといった「虚」中心でまた歩み出している。

「廃炉40年」「例外延長は最長60年」は、原発推進派の巻き返しです。
同じ誤ちをおかさないようにしましょう。
posted by ナッツ at 13:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 原子力
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/53215677
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック